農業が停滞する原因を考えてみた

ネットの知恵袋なんか見てると分かると思うけど、小規模農家が「販路拡大したいんだけど、どうしたらいいの?」なんて聞こうもんなら否定の嵐が待っている。
これは、地元でも同じ。
「JAに出荷しておけば大失敗はしないから」
「売り込みなんて、素人がするもんじゃない」
こういう考えが農家のベースにあり、実際それは間違っていない。
そして、JAの下で細々と農業を続けながら、「JAのせいで儲からない」と文句を垂れる。

では、一般企業ではどうかというと、「○○しておけば失敗しない」なんて甘い論理は通用しない。
経営分析もせず、勉強もせず、受け身で待っていれば、いつか必ず赤字になって潰れる。
だから皆必死に働くし、頭を使う。生き残るために。
販路拡大だって積極的に考えるし、自分で営業に行くことをやめろと言う人はいない。むしろ、それをやらなければ仕事を続けていけない。

対して、農家は。
営業はしなくていい。JAは、量が多くても少なくても、その日出来た分を1箱から買い取ってくれる。必ず。そう、必ず。
災害があってもJAを通して保険が支払われる。保険料はほぼ考えなくていい。JAが払うから。
新品の機械を買っても、国が半額出してくれる。認定農業者の場合だけどね。認定農業者になるには、5年後に向けての計画書を出すだけなので、ハードルはそれほど高くない。
あとは補助金の嵐。
全力でやらなくても、ど素人の新規就農者でも、そこそこなんとかなっちゃうんだ。
だから、「挑戦するな。JAに出しとけ」の思考になる。

でも、お気づきの通り、それでは事業として頭打ち。もっと上に行きたいとか、挑戦してみたいという人もいる。
特に、野望に燃えた新規就農者に多い。
でも、販路開拓している人は周りにほとんどいないし、相談できる相手もいない。
どうすれば良いかを勉強するために、まずその情報を探さなくてはいけない状態。
役所が畑を回って色々助言をくれるけど、JA出荷が前提だからね。他に出荷するパターンは知らないって言われるし。(もちろん、JAや自治体によって違うけど。)
つまり、農家が潰れないようにサポートしたり補助金出したりする体制はあるのに、挑戦していく農業者の可能性を広げていく体制はほとんど無いわけだ。

また、市場はほとんどの業務においてJAの独占市場になっており、JAに全部頼むか、全部自分でやるかの2択になっている。
普通は、作業によって色々選べる。ここは自分でやる、でもここは外注する、みたいな。
けっこう細かく選べるし、便利なサービスを提供してくれる企業もたくさんある。
でも、農家は2択なんだ。JAか、それとも、JAと対立して自分でやるか。自分でやるなら、JAは一切何もしないぞみたいな。やれるもんならやってみろ的な空気もある。
もっといろんな企業が入ってきて、いろんなサービスをいろんな価格で提供してくれればいいのにな、と思う。
そうすれば、自分の会社に合った支出ができるし、可能性も広がるじゃないか。

というわけで、
・特別際立った向上心を持たなくてもなんとかなってしまう体制に満足してしまい、新しいことに否定的になる高齢者の農家の方々(比率がとても高い)が多い
・農業を事業として成功させるための情報などのサポート体制がまだまだ足りないこと
・JAの独占市場
この辺に農業が停滞する原因があるのではないかなあと思う。